セラピスト日記
東栄町 「花祭り」
11月に入ると、北設楽郡東栄町の各地区で「花祭り」が始まります。国の重要無形民俗文化財に指定され、700年以上続いている奇祭です。
伝統の神事や、一昼夜続けられる舞、そして鬼が大地を踏み固めて生命力を吹き込む、山里の大切なお祭り。
花祭りの夜だけは、子どもの私たちも夜中まで起きていることが許されて、私も妹と友達と「花宿」で毛布に包まりながら舞を眺めていた思い出があります。急な神社の石段、「てーほへ てほへ」の掛け声、薄明りの中で揺れるざぜち、お酒の匂い、太鼓と笛の音、歌ぐらのひびき・・・。
キーンと寒くて、暗くて、いつもは静かな山の中、この夜だけは酔って大声で叫び、湯釜の周りを舞い踊る大人たちのトランス状態から目が離せず、異世界にいるような不思議な気持ちで、自然と体を揺らしながら夢中で舞を見つめていました。
私の中では故郷=花祭りであり、あの時代に花祭りを経験したことが、自分にとって、何だかとても大きなことだったと思えるのです。今でも大きくなった子どもたちを連れて「花祭りフェスティバル」にはできる限り行くようにしています。雰囲気は違いますが、あの拍子を聞くと胸が熱くなり、「ああ、また冬が来たな」と思うわけです。
今では考えられませんが、月あかりしかない真っ暗な夜道を、真夜中に小学校低学年の女の子3人だけで、てくてくと歩いて帰りました。妖怪が出ても驚かないような風景が、今も脳裏に焼き付いています。
冷たくなった耳を片手で温めながら、もう片方の手は妹としっかり繋いで。でも、家に着くまで「てーほへ」の声が耳から離れず、どきどきで胸は熱くて・・・。
みなさんの故郷の思い出は何ですか?
子どものころの自分の目に、強烈に焼き付いている風景はどんなものでしたか?
思い出は自分の核となって、ずっと一緒に生き続けて行くものなんだな・・・と思った冬の始まりです。